東京大学大学院の修士課程入学のための願書提出をした。理系の学生はたいてい修士課程までは進学するようであるが、23年前の卒業時にはそのような進路は回りくどいだけという印象があり選ぶ気になれなかった。しかし今はかなり違う。学部教育は一般教養2年と専門教育2年であるが、専門2年で身につくことはとても限定的で、教科書に書いてある分野を概観するに過ぎない。学ぶのはこれからというところでタイムリミットとなる印象である。
自分がいま専攻している地学分野で具体的に言うと、岩石の種類や層準の基礎知識などを地質年代や気候変動と結び付けて、ようやく全体像としての地球の歴史が把握できてきたところである。堆積学の先生が3年の夏学期に授業の中で話されていたことだが「こんなことは知っていて当然のことであって、それを知っているという前提の上で、ではどう学んでどう研究を切り開いていくかということが大事なのです」というメッセージがあった。昨年の今時分にその言葉を聞いたときにはずいぶん厳しい話し方だなあと感じたが、基礎知識を身につけていくにしたがってその真意がよくわかるようになってきた。大学院で学んで研究していくということは、そういうことなのかもしれない。
またおととし受験したいくつかの学部の学士入学の面接でよく聞かれたのは「学部を20年前に卒業しているのだから、次は大学院でしょう。なぜまた学部なのですか?」という質問であった。4年次の半ばにいる今となっては、その質問がよくわかる。しかしその質問に当てはまるのは、現役で学部におりその上で進学するケースなのである。ほとんどの学生がそうなのだから、当然の質問であったと思う。自分の場合はタイムラグが20年以上あった。このタイムラグを埋めるためにはやはり学部をやり直すしかないと思ったし、それを実践してみて正解だったと思っている。さらにいうと2年ではちょっと足りない感じもしている。駒場にさかのぼって2年次の勉強をやってみて思ったのであるが、一般教養の化学や解析の訓練がもうちょっと必要という感じがしている。英語力の底上げもあと1年分くらい必要である。2007年からTOEICスコアがトータルで200点近く伸長したが、離れていた分野のことを取り戻して使えるようになるのには最低3年はかかるという気がする。
ともあれ来年3月で学部の卒業見込みが立っているのだから、この8月の大学院入試に全力で取り組みたい。その前に7月は定期試験もあるし数々のレポートも提出しなくてはならないのだが、それらもすべて入学試験の基礎体力になると考えている。
東大駒場で団体受験。麻布のテンプル大学AEPで訓練した総決算である。ふだん文科一類の法学関係の授業で使われている900番教室に、自分も含め大学院入試間近の東大生たちが集合する。厳粛な雰囲気である。あとがない。でも優秀な人たちにとっては「力試し」くらいのことかもしれない。でも自分は必死だ。
リスニングはしんどい。昔の共通一次や東大入試にはリスニングなんてなかったのだ。だけど2011年よりほとんど毎日TOEIC650突破コースの音声を聞き続けている。少しは耳が慣れてきたと思うが、TOEICよりTOEFLは早口のマシンガンだと感ずる。
ストラクチュアは万全だ。対策のポイントは絞られている。主語と動詞、連結動詞、叙述形容詞、複数・単数…。理解し尽くした。文法は多分満点だ。
そして時間との闘いの長文問題。得意分野の地質や地理、理工系文書から取りかかる。単語の意味を問う問題はボーナスなので絶対に落とさない。そして段落の最初と最後の文は精読。あとはとらわれずに斜め読み。そしてタイムリミット。
のち、8月にスコアが送られてきました。自己最高点の513。(リスニング45、文法60、長文49)。これで大学院入試も気合で突破だ。
表題試験がだいたい終了した。試験での評価は堆積学、古気候・古海洋学、地形学など。今回は他学部もたくさん試験を受け、博物館概論、都市交通計画、社会心理学特論なども受験した。先々週7月8日から試験が五月雨(さみだれ)のように始まって、実に三週間かかっている。どんどん大学院入試が迫っているのに、対策をしている暇がない。これからもレポート課題をやりとおさなくてはならないので、ますます時間がなさそうである。しかしこうした学期中の修練がそのまま大学院入試対策に直結しているのではないかと思うことがある。専門分野の勉強だからだ。たしかに大学院の試験は小手先の受験技術で乗り切れるように感じのものではない。定期試験もそうだったが、論述力が必要で、ちゃんと日本語の文章が整理して書けるかどうかがとても大切なポイントになっていると思う。