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奇跡の今日一日

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2014-07-11(Fri) [長年日記]

_ 石松さん

常任理事の任期を終えた鹿児島の仲間ががんの宣告を受け、しかも末期ということで大変心配していたが、冷酷なことに病気は粛々と進むばかりだった。亡くなった日の朝、うちの今年の朝顔の最初の花が開いていた。彼のスポンサーから訃報のメールをいただいていたのだが、たまたまネットにつながる環境が夜までなくて、知ったのはぼくが北九州の実家のそばのモスバーガーでPCを開いたときだった。病気を宣告されたのが6月23日らしく、ぼくが彼と電話で話したのが6月25日、鹿児島に会いに行ったのが6月30日、こん睡になっているのがわかったのが7月7日、そして7月11日に帰らぬ人となってしまった。宣告から亡くなるまでわずか19日。あまりにも早かった。

しかし、70歳の誕生日を迎え、ソブラエティ20年を迎え、あわてず騒がずにこやかに人と接していた。身辺を整理し、遺品だと笑って言いながら愛用品をいろんな仲間に分けていた。励ましに行ったつもりが、本人は落ち込んでなく、逆に食事までごちそうになってしまった。一緒に食べた最後のシロクマ(ミルクかき氷)、ぼくは忘れずにいつづけるだろう。

本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]

吉田和夫 [やるべきことをやったと思うことは自分の力だけではないことと思います。]


2014-07-28(Mon) [長年日記]

_ 夏休みの現地地形研究

夏休みと言っても授業が学期と学期の間で一時なくなるというだけで、集中講義が始まるし、研究は本格的になるし、ふだんより高密度の生活になるかもしれない。この木曜から日曜にかけて、神流川上流の上野村へフィールドワークに行ってきた。ぼくの研究は河成段丘なので、川沿いの山間の人の住んでいるところに大変興味があるのである。三泊して山の中にいると、人生がちょっと変わるような錯覚にもとらわれる。PHSが全く入らず、電話もメールも無線LANも入らない期間だった。妻に電話するにも公衆電話しかない。授業期間はまとめて移動できないが、この時期はこういうことが可能なのである。学部のときにも野外実習が夏休みにたくさんあって楽しかった。夏の日差しに汗だくになりながら村を歩き、山を登り、測量をして写真を撮って、野帳に記載していく。まだ初学者でしかないし何もわかっていないのだけれど、なんだかいっぱしの地質学者になれたような気分になるから不思議だ。何か月も泊まり込んで、ずっと研究をするような日はやってこないかもしれないが、その片鱗を経験できるだけでも楽しい限りである。

たしかに重い、つらい、暑い、疲れる…などマイナスの要素ととらえれば、それもきりがない。問題は「とらえかた」なのだと思う。フィールドはつらいと力説する人たちもいる。なんでそんな言い方をするのか、もったいない気がする。蚊やヒルに噛まれて、たしかに気持ちはよくないかもしれないが、それに余りある楽しさがある。地図を見ているだけでも楽しいのに、実際自分が現地に足を運ぶことが、旅行の道楽ではなくて仕事や研究につながり、地球の不思議さを解明できるのだとしたら、こんなに面白いことはない。地球や山や海は、今までもずっとそこにあったのだ。この面白さに気づかなかった自分を最近になって不思議に思う。仕事を失わせ、学生に戻らせてくれた神様と運命に感謝したい。


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