震災の影響で少し遅くなったが工学部などの授業が今週から始まった。放送大学の面接授業などで「学生として授業に参加する」のは予行演習していたので、まあそれほど戸惑いもない。20年来教壇の側にいたので、先生の立場もよくわかる。先生の話が始まったら私語をするんではないぞ学生諸君。おれが代わりに怒鳴ってやりますよ、関村先生、って感じです。
月曜初日は関村先生の信頼性工学の授業に参加。工学部四年の授業である。今は当然ながら全部パワーポイントでのプレゼンである。数式や関数が出てくる。理系の授業なのでこれも当然。簡単な微分方程式。積分記号。なつかしいなあ。でも郷愁に浸っている暇はない。課題が出された。さあ計算だ。簡単な算術計算だと思っていたら、考え方次第で数式が違ってくることに気づく。帰納法的に残っているものの中からどうするとか、統計的な手法に何種類もアプローチがあることに気づかされる。電柱から電柱に向かっているときに、電柱は2本だが、間の隙間は一区間しかない、とか。故障が発生すると故障しなかったものが母集団に変わる、とか。悪戦苦闘しているとあっという間に終了時間。やっぱし微分方程式の感性が必要なのだ。
翌日工学部図書館でかなりの時間をかけて文献、理論書、演習書などを探し歩く。読めば読むほどいろんな人がいろんなアプローチをしていることに気づく。品質管理の学問なのだった。一定の解答も自分なりに見つかる。ほっとひと段落。
東京大学工学部の授業は21年ぶりだった。あのころは聞いたら聞きっぱなしで漫然と受けていた。若かったから吸収効率が良かったし、それでよかったのかもしれないが、いまは有り難味がわかる気がする。欧米並みに40代50代の社会人経験者が続々と大学に戻って学べる社会環境が必要だと思う。運命のいたずらでたまたまそういう境遇になった自分は幸運だったのかもしれない。