_ 私は新型コロナウィルス流行の直前である2019年10月に慶應義塾の通信教育課程に入学した。秋入学だったので最初の半年はレポートと試験のみのいわゆる「テキスト学習」だったので、コロナ禍の影響はほとんどなかった。2020年1月の定期試験も三田校舎で通常通り受験できた。しかし2020年4月からは事情が一変した。4月入学者と合同で行われるはずだった入学式はもちろん延期になった。慶應の通学課程の大学生も入学式は受けられなかったので仕方がないと納得している。そして大きな痛手をこうむったのは、6月以降始まったスクーリングが機能しなくなったことだ。スクーリングは春季、夜間、夏季、秋季と受講が募集されたが、ほとんどがオンラインでの実施となり、しかも定員制で人数枠を超えると抽選で受講資格が与えられるのである。すべてのスクーリングに応募したが、ほとんど抽選漏れだった。夏季のひと枠だけ抽選に当たったが、内容はもちろんオンライン受講。延々とオンデマンドのストリーミングビデオを視聴するというもの。単位は取れたが放送大学のビデオ授業と大差なかった。数ある通信教育の中で慶應義塾を選んだのは、慶應の校舎で慶應の教員から現場で授業を受けられるというメリットがあるからに他ならなかった。そして入学から一年が過ぎ、通学課程の学生とともに入学式がようやく受けられるという段になったが、これもなんとオンライン配信だった。慶應義塾の講堂で対面で受けたかった。入学生の皆さんと一緒に、塾歌や「若き血」を歌いたかった。それも叶わぬまま、いま二年目が進んでいる。