去年の四月に理学部三年に編入させてもらって嵐のように勉強させてもらった。もうすぐ年度が終わる。この一年間、ひたすら地学の基礎を学ばせてもらった。放送大学で数年続けた「90分の授業を受ける」という面接授業の忍耐練習が効果を発揮したと思う。毎日毎日授業漬けである。望んでいたことがかなえられたのだから、忍耐とは言っても楽しい毎日だった。もちろん座学だけではない。演習や実験、調査や野外巡検も新鮮であった。むしろ机での勉強よりも体を動かす実習のほうが、学問が身体化し、内面化したように思う。実際目で見てスケッチしてグラフを描いたり実物を計測したことは、記憶にしっかりと刻まれる。知りもしなかった単語を暗誦しただけではものの五分で忘れそうだが、何時間もかけて拾い集めたりスケッチして回った角閃石、緑色片岩、パミスやスコリアは、たぶん何年間も忘れない。地学はそんなところがある。
朝は8:40の一時限目から始まって午前は2コマ、午後は実習なら最低四時間、座学ならだいたい3コマあり、ほぼ18:00ごろに一日の授業が終わっていた。エネルギーを使い果たすというのはいいものだ。地域で地区委員や評議員をやらせてもらっていたときの土日のような状態が平日に毎日続くのである。すごい。ぼくはあまり仕事に関してはハスに構えてテキトー星人だったので、この歳になって「一生懸命やる」というのは血沸き肉踊る体験だった。そしてさらに冬学期は駒場と本郷を行ったり来たり。往年の赤坂見附・渋谷経由の地下鉄移動がよみがえった感覚だ。駒場の教養学部は昭和末の古き良き駒場寮や矢内原公園は影をひそめてしまったが、全員でいっせいに休み時間の教室移動を行う理科一類、理科二類の若い人たちと混じって教室に入るのは楽しかった。
あとは非常にレベルの高い定期試験である。だいたい15回くらいの講義の締めくくりとして試験が課されるのだが、きちんと勉強して対策すれば取れるものだが、無策で入場すると途方に暮れる結果となる。ある先生が言うには「できる人とできない人が真っ二つにわかれる」のだそうだ。前期はまったく落とさなかったし、後期は途中であきらめたものもチラホラあったが全力は尽くしたと思う。レポートも非常に頻繁に出た。やってもやっても次が出るし、もたついているとさらに次のものが積み重なってくる。デッドヒートを繰り広げている感じだ。
ほどほどの配当教科どおりならまだしも、ぼくは20何年ぶりの大学生活がうれしすぎて他学部他学科科目をたくさん取り過ぎた。その結果ひいひい言わざるを得なかったのだが、仲間も増えた。サークル活動までは手が出せなかったが、キャンパスガイドは楽しかったし、これはしばらく続けていくつもりである。もう10年若ければ野球部や応援部も夢ではなかったのだが、体力的には学業専念だけでも精一杯だったといえるだろう。
そして来週から四年に進級である。レベルアップ・パワーアップして夏学期を乗り切り、その勢いで大学院修士課程の入学試験に臨む。できるとかできないとかではなくて、レールに乗った以上やり続けるしかなかろう。楽しく充実した学問の道に終わりはないのである。