村上春樹の名作小説を読み進めている。実は20年前は、本郷三丁目のパチンコの景品で取ったハードカバーの「ノルウェイの森(上)」を持っていたのだった。あの真っ赤な単行本である。読まないまま学校を卒業し、九州電力に行くときもそれを持ったまま行ったが、結局読まなかった。いまあの本は福岡の実家の本棚にあるかもしれないし、あるいは捨ててしまったのか、記憶があやふやである。
それをここへ来て、なぜ読みたいという気持ちになったのだろうか。板橋区に引っ越してから、小茂根図書館で貸し出しカードを作り、真っ先に借りたのである。内容もまったく下調べのないままだ。
上巻は読み終えた。実はぼくは村上春樹は何篇か読んでいる。あの妙に薄っぺらな感覚が甦ってくる。薄っぺらというのは批判ではない。日常的にぼくたちが持っているリアルな薄っぺらさなのだ。そして主人公は昼間だろうと何だろうとビールやワインを飲む。これがイヤでここ十年くらい村上作品から遠ざかっていたんだっけ。
メジャーどころはメジャーな理由が必ずある。みんなが支持しているからだ。ぼくもいくらか普通の薄っぺらな生き方がしたいと思うようになったのかもしれない。