_ 舛添要一先生はわたしが大学一年に入学したとき教養学部の助教授で、一般教養科目の「政治学」を担当しておられた。フランス政治がご専門で著書「赤いバラは咲いたか」を上梓されたばかりだった。もちろん著書は購入したし、授業も登録した。ご出身の八幡高校はわたしの出た小倉高校と隣の校区で、同郷の親しみもあった。現在もそうだが滑舌がよく、論理明晰で、授業も面白く、とくに当時の外交問題やSDI(戦略的防衛)の話がエキサイティングだった。
いろいろな政治活動を展開されてきた末に東京都知事となった。新党を作ったり自民党に利用されたりで、少し心配はしていたが、ご自身を守る力はじゅうぶんおありだろうから、われわれ一都民、一国民が心配するのは杞憂かもしれないと考えていた。しかしマスコミの包囲網は尋常ではなく、まるでお祭り騒ぎのように批判の集中砲火が始まった。些細な材料を取り上げて袋叩きにしている状況に見えた。気分の悪くなることわざで「川に落ちた犬は叩け」というのがあるが、まさにその通りの様相である。舛添さんは気丈にも「辞任は考えていない」と押し通していたが、マスコミの集団リンチによって退職を余儀なくされた。
わたしは猪瀬さんも舛添さんも優秀な政治家だと思っている。今もそうだ。古くは田中角栄もそうだった。しかし金銭問題でスキャンダルがあるとわかるやいなや、マスコミの徹底的な政治家つぶしは異常な執念を以ておこなわれる。中には「ちょっとやりすぎなんじゃ…」と思っている人も多かったと思われるが、多数が一人をいじめているときに「やめろよ」と声を上げるのはとても勇気がいる。声を上げた者も今度は標的にされるからだ。舛添さんを辞任させることに疑問視する声を上げたのは、堀江貴文くらいだっただろうか。
結局舛添さんは辞任して都庁を去ってしまった。マスコミに徹底的に翻弄されたと思う。クレヨンしんちゃんの本だとか、別荘地に出かけたとか、ファーストクラスを使ったとか、なんだか品のない材料を取り上げて、わざと庶民の反発心を煽る記事を書き立て、他の有名人に「せこい」とか「失望した」とか言わせていたマスコミってなんなのだろう。
わたしは今も恩師である舛添さんを尊敬しているし、その人格的価値は下がっていないと思う。むしろあれだけのバッシングを受けて耐え抜いたことで、強靭な精神力を見せてくれたのだと、強くたたえたいくらいである。逆に舛添さんを批判していた人たちに聞きたい。公私混同も贅沢も、あなたはまったくして来なかったし、いくら地位や権力が手に入ってもあなたは清廉潔白で精進できるとお考えなのですか??と。
ますますマスコミが嫌いになりそうです。