月曜から金曜までの五日間、泊りがけで富士山と丹沢の鉱物学実習。正確には「地球惑星環境学野外調査III」である。理学部から三台のワゴン車で富士に向かい、まずは富士山の噴火についてのエビデンスを確認してゆく。一口で富士山の噴火といっても年代によっていろいろ呼び方がある。そしてその堆積物。「宝永パミス」「二ツ塚スコリア」「湯船第二スコリア」など。堆積物をサンプリングしてきて、夜は粒度分析と勉強会である。
富士山の調査中は山中湖畔の東京大学の施設「山中寮」に泊まった。ぼくが高校生の頃だったか酒に酔った東大生が山中湖にボートを出して転覆し、死者が出たニュースを見た記憶がある。
富士山噴火の考察はともかくとして、新六合目まで登ったわけだが、やはり日本一の山。体力的に無理だったので途中でみんなについていけなくなったが、はるか上に頂上の剣ヶ峰は見えたし、とても感動した。
ここは地球なんだと感じた。スケールがすごい。風。冷たさ。視界の広さ。音がないこと。持ってきたパンの袋がはちきれんばかりに膨張している。気圧が低いのだ。標高2400m~2500mくらいの六合目付近でこうなのだから、上はもっとすごいのだろう。いつかまた捲土重来。
後半は丹沢付近の探索である。おもに河内川の川原を中心に露頭を調査した。古い丹沢層群と新しい足柄層群。プレートのぶつかりと沈み込みでこのあたりは力を受けている。富士山からの古い溶岩流。そして火山灰の堆積。北半球の中緯度地域では風は西から偏西風が吹くので、富士山の火山灰はこのあたり一帯に非常にたくさん積もっているのである。
沢の水はとてもきれいで、川原にはトーナライト、アンフィボライト、クローライトなどのたくさんの変成岩があふれている。その形や粒径を調査する。いろんな構造。何千年も何万年もかけて、これらの石ができていることを知る。先生の説明があまりに明快で驚く。はっきりとすばやく質問に答えられる様子は、知見の多さと質を感じる。あのような研究者になりたいと思う。
河内川の途中で、人が一人やっと渡れるくらいの吊り橋に遭遇。全員順次渡る。歩いていると振動で共振する。手放しでは渡れないスリル。一人だったらどうだったろうなあ。
神縄断層をまたいで層群が一気に変化する。涸れ沢。そしてまたトーナライト。滝が流れるところもある。花崗岩の面構造。現場にたくさんある石たちに圧倒されながら巡検は終了。丹沢荘の食事はこれまでの巡検の中ではトップレベルの豪華さとおいしさだった。そして東名高速を走って東大の本郷キャンパスに到着。