ある有名な人のゴーストライターとして原稿を書いている人がいて、そしてその人がパソコンを持っていないので、さらにそのテキスト打ちをぼくがゴーストとして入力するバイトをしているのであるが、その原稿打ちがやっとこさ終わった。ちょこちょこと暇を見つけてはやっていたのだが、結局原稿用紙換算で186枚である。ゴーストのゴーストである。幽霊にはもはや手も足もない……か。与えられたことをただ淡々とこなす、という、病的人間にとっては一番難しい作業かもしれない。自分の考えを差し込む余地がないあたりが、あたかも回復のプログラムのようだ。
差したる金額にはならないかもしれないが、株や為替で負けた額の百分の一くらいにはなるだろう。こういうのを百回くらいやれば、あんなものは簡単に取り返せるのだ。そして、株や為替と違って、労働は100%「確実に勝てる」。ああ、すばらしい、労働の力。